企業が海外進出するメリット・デメリットと手順、市場調査のポイント

国内の人口減少が進む中、多くの企業が労働力や経済力の縮小という深刻な課題に直面しています。

この状況を打開する手段として、海外進出を検討する企業も少なくありません。海外進出には、新たな市場を開拓し、コスト削減やリスク分散を図るチャンスがあります。しかし同時に、海外進出にはデメリットも存在するのです。

新規取引先の開拓や現地パートナーとの提携には時間と労力がかかり、現地の消費者ニーズや競合状況を正確に把握することは簡単ではありません。このような課題を乗り越えるために、重要となるのが市場調査です。現地の市場状況を正確に理解し、戦略を練ることで、成功確率を高められるのです。

本記事では、企業が海外進出を成功させるためのメリット・デメリットとその具体的な手順、そして市場調査の重要なポイントについて解説します。成功の鍵を握る情報をしっかりと押さえ、海外進出の計画に役立ててください。

企業が海外進出をする5つのメリット

企業が海外進出をすることで、市場拡大や新たなビジネスチャンスの創出、コスト削減などさまざまメリットを見込めます。まずは海外進出をする5つのメリットを見ていきましょう。

市場の拡大

少子高齢化と経済成長の停滞により、企業が成長を持続させるのが難しくなってきています。特に、日本の人口減少は深刻で、内閣府の予測によると、2060年には日本の人口が現在の約1億2000万人から8600万人にまで減少するとされています。これにより、国内の消費者市場は縮小し、企業の売上拡大が困難になっているのが現状です。

出典:内閣府

一方、海外市場はその逆で、多くの新興国や途上国では経済成長が著しく、消費者市場も拡大しています。こうした成長市場に進出することで、日本企業は新たな販路を開拓し、国内では得られない売上増加の機会を得られるのです。

また、現地での事業拡大により、長期的な安定成長を目指すことも可能となります。特に、まだ発展していないニッチ市場においては、競争が少なく、早期参入することで市場の主導権を握れるチャンスがあるでしょう。

新たなビジネスチャンスの創出

海外進出により、日本国内では出会えない新しいビジネスチャンスを得られます。

特に現地の消費者ニーズや商習慣に応じた商品やサービスを開発・提供することで、競争優位を築くことが可能です。例えば、アフリカや中南米では、農業やエネルギー分野で日本の技術が高く評価されており、これらの市場に適した製品やサービスを提供することで、現地での地位を強化できるかもしれません。

こうした市場に参入することで、企業は新たなビジネスモデルやパートナーシップを構築し、国内では得られない利益を享受できるようになります。また、現地企業との提携やM&A(合併・買収)を通じて、既存の市場リソースを活用しつつ、新規市場への効果的な参入が可能です。これにより、ブランドイメージや企業価値のさらなる向上に期待できるでしょう。

コスト削減

海外進出によるコスト削減は、特に製造業や労働集約型産業において大きなメリットをもたらします。

多くの新興国では、労働力が日本に比べて安価であり、人件費を大幅に削減できる可能性があります。例えば、ベトナムやインドネシアなどの国々では、日本の労働者に比べて賃金が大幅に低いため、製造コストを抑えられます。また、原材料も現地調達が可能な場合、輸入コストや運送コストを削減することができるため、全体的なコスト圧縮の実現が可能です。

さらに、進出先の政府が提供する税制優遇措置やインセンティブを活用することで、さらなるコスト削減を見込めます。このような環境下での生産や事業運営により、企業は競争力を強化し、コストパフォーマンスの高い製品やサービスを提供できるようになります。

リスク分散

複数の市場に進出することで、リスク分散の効果が期待できます。

特定の国や地域に依存するリスクを軽減し、さまざまな市場での事業展開によって経済的な変動や市場変化に対する耐性を強化できるのです。例えば、日本国内市場が不景気に陥った場合でも、海外市場が好調であれば、その損失を補填することが可能でしょう。

特に、世界経済は地域ごとに異なるペースで成長しており、一部の地域での不況が他の地域での好調によって相殺されるケースも多く見られます。これにより、企業全体としての事業リスクを軽減し、安定した経営基盤を築くことができます。

ブランドイメージの向上

グローバル市場での成功は、企業のブランドイメージを大きく向上させる重要な要素です。

国際的な知名度や信頼性が高まることで、国内外の取引先や消費者からの評価が向上します。これは単に海外市場における利益だけでなく、国内市場においても新たなビジネスチャンスを生む可能性を秘めています。例えば、日本の化粧品ブランドが海外の高級市場で成功を収めると、国内でも「世界に通用するブランド」という付加価値が付与され、販売促進につながるでしょう。

また、国際的な存在感を高めることで、さらなるビジネス機会の創出を見込めます。グローバルブランドとして認知されることにより、パートナーシップや投資の機会が増加し、企業価値が高まるのです。

企業が海外進出をするデメリット

海外進出により多くのメリットを享受できる一方、いくつかのデメリットも伴います。メリットとデメリットを把握したうえで、海外進出をするのかどうかを検討しなければいけません。ここでは、海外進出の4つのデメリットをご紹介します。

新規開拓が困難

海外市場に進出する際、最も大きな課題のひとつが新規顧客の開拓です。

日本国内で成功を収めた製品やサービスが、そのまま海外で通用するとは限りません。文化や商習慣、消費者の価値観の違いが、現地での受け入れに大きく影響します。例えば、飲食業界では日本で人気の食材や味付けが海外では全く受け入れられないこともあります。

また、商品のパッケージデザインや広告手法も、国ごとに大きく異なり、現地の消費者に合った適切なアプローチが必要です。

さらに、競争が激しい市場では新規参入が困難であることが多く、特に既存の大手企業が強固な地盤を築いている場合、シェアを奪うことは一層難しくなるでしょう。現地の企業やブランドが消費者の信頼を得ている状況では、新規参入者がその信頼を上回るための戦略を慎重に練る必要があります。

こうした要因から、事前の市場調査や現地パートナーとの連携が欠かせません。

文化や価値観の違い

海外においては、日本とは異なる文化価値観がビジネスに深く影響を及ぼします。

特に労働に対する価値観や働き方の違いは、現地従業員のマネジメントに大きな課題をもたらすでしょう。欧米諸国では個人主義が強調され、個々の意思決定や独立した業務遂行が重要視されますが、日本ではチームワークや協調性が重視される傾向にあります。このような価値観の違いは、組織内のコミュニケーションや意思決定プロセスに影響を及ぼし、企業文化の統一が難しくなる場合があります。

さらに、言語の壁や文化の違いも、労務管理の障害となります。特に非英語圏の国々では、言葉の違いが誤解を生む原因となり、指示が正確に伝わらないことが多々あります。また、宗教的な価値観や伝統的な慣習が強く根付いた地域では、労働時間や休日、労働条件などについても独自の規範が存在するため、これらに対応するための労務管理が求められます。

法規制やカントリーリスク

海外進出において特に注意しなければならないのが、進出先国の法規制やカントリーリスクです。

各国の法律や規制は、日本と大きく異なることが多く、これに対応するためには現地の法務専門家やコンサルタントとの連携が必要になります。

例えば、EUでは環境保護規制が厳格で、化学製品やプラスチックの使用に対して厳しい基準が設けられています。これに適合しない製品は市場に投入できず、輸入が禁止される場合もあります。こうした規制に対応するためのコストや手続きが企業の負担となることもあります。

さらに、カントリーリスクとして挙げられるのは、進出先国の政治的な不安定さや経済的な変動です。特に新興国では政権の交代や政策変更により、企業活動に対する規制が突然変わるリスクがあります。また、為替リスクや経済危機も、事業継続に悪影響を与える可能性が高く、これらに備えたリスクマネジメントが不可欠です。

人件費の上昇

海外進出当初は、新興国での低賃金労働力を活用してコスト削減を図ることができますが、経済成長に伴い賃金が急激に上昇するリスクも考慮しなければなりません。

出典:JETRO

例えば、中国やインドなどでは、かつて安価な労働力が魅力であったものの、急速な経済成長に伴い賃金が年々上昇しています。10年前に比べて平均賃金が約2倍に増加しており、製造業におけるコストの優位性が低下しつつあります。

このような賃金上昇は、当初のコスト削減効果を減少させ、企業が予定していた利益率に悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、現地の労働市場が逼迫することで、優秀な人材の確保が難しくなり、人材確保に追加コストが発生することも考えられます。

このため、進出先の国が今後どのように経済成長を遂げ、賃金がどの程度上昇する可能性があるのかを慎重に評価しなければいけません。また、賃金上昇のリスクを回避するためには、地域や業種に応じた分散投資や、長期的な人材育成戦略が求められるでしょう。

海外進出の形態

企業が海外市場に進出する際、どのような方法を選択するかは、その目的やリソース、リスク許容度によって異なります。以下では、主な5つの進出形態を詳しく解説します。

輸出

輸出は、最も一般的かつ初期リスクの少ない海外進出の形態です。

自国で生産した商品やサービスを、外国市場に輸出して販売する方法であり、現地に大規模な投資を行わずに市場に参入できるため、リスクが比較的低いという特徴があります。輸出を行うことで、企業は現地の需要を確認し、また、貿易に関する規制や市場の特性を学ぶ機会を得られます。

ただし、輸送コストや関税の影響により、利益率が低下する可能性があります。さらに、輸出の場合、現地市場に根付いた販売ネットワークを持たないため、現地消費者のニーズに対応するのが難しく、現地企業に対する競争優位性を築くには限界があります。

直接投資(現地法人設立)

直接投資、特に現地法人の設立は、海外市場に深く根を下ろして長期的に事業を展開するための進出形態です。

現地に自社の子会社を設立し、製造や販売、サービスの提供を行います。この方法では、自社がすべての事業活動を管理できるため、商品開発やマーケティング、販売戦略を柔軟に進められます。また、現地でのビジネス展開を通じて、消費者ニーズに迅速に対応し、現地市場に適した製品やサービスを提供することが可能です。

しかし、現地法人の設立には高い初期コストがかかり、法律や税制の複雑な手続きにも対応する必要があります。例えば、現地の法規制に精通していない場合、事業運営において予期しない問題が発生するリスクがあります。さらに、法人設立後も、現地での人材確保や労務管理、サプライチェーンの整備など、多くの経営課題に直面することが予想されます。

M&A

M&A(合併・買収)は、既存の現地企業を買収することで、素早く市場に参入できる進出形態です。

買収により、既存の顧客基盤、流通ネットワーク、ブランド力、現地の経営ノウハウを即座に利用できるため、ゼロからの事業展開に比べて時間とコストを大幅に削減できます。特に、競争の激しい市場や成熟した市場では、新規参入よりもM&Aを通じて市場に入る方が成功の確率が高くなることがあります。

しかし、M&Aは投資額が非常に大きく、買収後の企業統合がスムーズに進まない場合、期待した成果を得られないリスクもあります。異なる企業文化や経営スタイルの統合には時間とコストがかかることが多く、場合によっては労働争議や企業イメージの低下を引き起こす可能性もあります。

ライセンス供与

ライセンス供与は、自社が持つ技術やブランド、製品の製造・販売権を他社に供与し、その見返りとしてロイヤリティを受け取る形態です。

比較的リスクの少ない進出方法であり、自社の資金を大量に投下する必要がなく、また、現地での事業運営を他社に委ねるため、経営リスクを大幅に軽減できます。特に技術革新やブランド力が強い企業にとって、ライセンス供与は現地企業と協力しつつ、迅速に市場に展開できるメリットがあります。

分かりやすい例が、日本のアニメやキャラクター商品。これらは海外企業にライセンス供与され、グローバル市場での展開が成功を収めています。

しかし、この方法では、現地パートナーのビジネスの質や倫理に依存する部分が大きく、ライセンシーが適切な品質やサービスを提供できない場合、自社のブランドイメージが損なわれるリスクもあります。また、ライセンス供与に依存しすぎると、現地市場での直接的な関与が薄れ、長期的な成長戦略が見えにくくなる可能性もある点には注意が必要です。

フランチャイズ

フランチャイズは、自社のブランド、ビジネスモデル、運営ノウハウを加盟店に提供し、加盟店が現地での事業運営を行う進出形態です。

フランチャイズは、自社の名前やビジネスを利用して事業を展開するため、初期投資を抑えつつ、短期間で市場を拡大できます。飲食業界や小売業界でよく用いられるこの方法は、企業が直接的に市場に進出するリスクを軽減しながら、規模の経済を実現する手段となります。

しかし、加盟店の選定や管理が適切でなければ、ブランドの価値が損なわれるリスクがあり、現地での統一されたサービス提供や品質管理が難しくなることもあります。そのため、フランチャイズ展開においては、徹底した管理体制と信頼できるパートナーの選定が重要です。

企業が海外進出をする手順

企業が海外市場に進出するためには、計画的かつ戦略的なアプローチが不可欠です。以下では、企業が海外進出を進める際に踏むべき8つのステップを詳しく解説します。

STEP 1: 海外進出目的の明確化

海外進出の第一歩は、なぜ進出するのかという目的を明確にすることです。

単に「市場を拡大したい」というだけではなく、具体的な目標を設定する必要があります。例えば、新興市場における売上増加、コスト削減のための生産拠点移転、技術やノウハウの世界展開、さらには国際的なブランド力の強化など、進出の動機は多岐にわたります。

目的が明確になることで、その後の計画策定や進出方法の選定がスムーズに進み、進出後の成功確率が高まります。逆に目的が不明確なまま進出を進めると、現地での競争戦略やマーケティング活動がぼやけてしまい、成果を上げることが難しくなります。また、目的がクリアであることは、社内外の関係者にとっても進出プロジェクトへの理解と協力を得るうえで非常に重要です。

STEP 2: 計画案の策定

次に行うべきは、進出に向けた具体的な計画案の策定です。

計画案には、市場調査結果に基づく進出戦略やスケジュール、必要なリソース(資金、人材、技術など)、そしてリスクマネジメントの方法が含まれます。また、進出する市場がどの程度の成長余地を持っているか、競合企業の状況、法的な規制、経済的な安定性なども詳細に分析しなければいけません。

計画案を策定する段階では、短期的な目標と長期的な目標をバランスよく設定しましょう。短期的には現地での拠点設立や市場参入が焦点となりますが、長期的にはブランド確立や持続的な成長が課題となります。

さらに、この段階では経営陣の合意を得て、社内のリソースを適切に配分し、実行可能な計画を立てることが重要です。

STEP 3: 国内での予備調査

海外進出の前に、まず国内での予備調査を行うことが不可欠です。主な手法はデスクリサーチとなるでしょう。

国内でできる情報収集には、政府機関や商工会議所、国際的なコンサルティング会社からのレポートを活用する方法があります。特に、現地の政治状況、経済動向、法規制、文化的な背景などの基礎情報を集めることで、進出先の国におけるビジネスリスクを事前に把握できます。

この段階での調査は、進出の初期段階で発生する不確実性を減少させ、リスクの予測と対策を講じるために重要です。

また、国内の同業他社がどのように進出しているか、成功事例や失敗事例を参考にすることで、自社の進出計画のブラッシュアップにもつながります。予備調査の段階で見つかったリスクや課題は、次の現地調査やビジネスモデル策定のステップで具体的な解決策を練る材料となります。

STEP 4: 現地調査

国内での予備調査を終えた後は、実際に進出先の国や地域に足を運んで行う現地調査が欠かせません。

現地調査のメリットは、現地の消費者ニーズや競争環境、物流、法的な規制など、より詳細な情報を直接確認できる点です。特に、現地パートナーや代理店と会うことで、進出のための具体的な協力体制を構築できる場合もあります。

また、現地の消費者や従業員の価値観や文化を理解することは、成功に不可欠です。現地でのビジネス慣行や商習慣が日本とは大きく異なる場合も多いため、それらに適応するための具体策を立てなければいけません。

さらに、現地での競合他社の状況や販売チャネルの特性を把握し、自社が優位に立つための差別化戦略を策定します。この現地調査の段階で得られた情報が、進出の最終決定を下すための重要な基盤となります。

STEP 5: ビジネスモデルの策定

現地調査の結果をもとに、進出先の市場に最適化されたビジネスモデルを策定します。

ここで重要なのは、進出先の市場特性に応じた販売戦略、価格設定、流通経路の選定です。例えば、進出先の市場が価格競争が激しい場合、低コスト戦略を取る必要があるかもしれません。逆に、品質やブランド力が重視される市場であれば、高付加価値戦略が適切です。

また、現地でのパートナーとの提携や販売代理店の選定もこの段階で行われます。適切なパートナーや代理店を選ぶことは、進出の成否を分ける重要な要素です。現地企業との協力により、現地市場に精通したノウハウやネットワークを活用できるため、自社だけでの進出よりも効率的かつ迅速に市場への浸透を行えるでしょう。

さらに、財務面での持続可能性や法的リスクを考慮したビジネスモデルを策定し、安定した事業展開を目指します。

STEP 6: 海外での展示会の計画と実施

海外進出において、展示会は現地市場での迅速なビジネス展開に欠かせない重要な営業・マーケティング手段です。

わずか数日間で現地のバイヤーやパートナー、消費者と直接交流し、多くのリードを獲得できる展示会は、他の施策では得られない大きな成果を期待できます。

まず、進出先の市場や業界に適した展示会を選定し、明確な目的を設定することが成功の鍵です。新規顧客の獲得や既存取引先との関係強化、新製品の発表といった具体的な目標を定めることで、展示会を通じたビジネスチャンスを最大化することができます。

次に、予算計画の段階では、出展費用や渡航費、ブースデザイン、さらにはマーケティング費用も考慮する必要があります。さらに、現地での集客を見据えた施策を早期に準備しておくことが重要です。展示内容については、製品やサービスを視覚的かつ魅力的に伝えることが肝心です。特に現地の文化や言語に配慮したブース設計は、来場者の興味を引き、効果的なコミュニケーションを促進します。

展示会当日には、製品やサービスのデモンストレーションを積極的に行い、来場者とのネットワーキングを推進することで、新たなビジネスチャンスを創出します。そして、展示会終了後のフォローアップが最も重要なステップです。リードを迅速にフォローし、継続的なコミュニケーションを通じて関係を深めることで、展示会で得た成果を確実に事業拡大につなげていきます。

弊社では、展示会の計画から実施、さらにはフォローアップまでの全プロセスを一貫してサポートしています。中間業者を通さないことでコストを削減し、効率的なプロジェクト運営を実現しています。ぜひ、貴社の海外進出に向けた展示会戦略の一環としてご活用ください。

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STEP 7: 人材の確保と育成

海外進出を成功させるためには、現地での優秀な人材の確保と育成が重要です。現地法人の運営や市場攻略には、現地の文化や商習慣を理解したスタッフが不可欠です。特に、現地での経営を担うマネジメント層の選定や、ローカルスタッフの採用・育成が鍵となります。これにより、現地市場への適応力を高め、スムーズな事業展開が可能になります。

また、グローバルなビジネス環境では、日本本社と現地法人の間で円滑なコミュニケーションが求められるため、両者をつなぐグローバルな視点を持った人材の育成が必要です。現地スタッフのモチベーションを維持しつつ、適切なインセンティブを与えることで、企業全体の成長を促進させることができるでしょう。

STEP 8: 評価と改善

進出後も、事業の評価と改善を継続的に行うことが重要です。

進出後に得られる現地市場のデータやフィードバックをもとに、事業の進捗状況を評価し、必要に応じて戦略を見直します。特に、進出初期段階では予期せぬ問題が発生することが多いため、迅速な対応が求められます。

また、長期的な視点で見た場合、現地の市場環境や競争状況は変化していくため、その都度ビジネスモデルやマーケティング戦略を柔軟に改善することが求められます。企業は、常に現地の市場動向をモニタリングし、事業の最適化を図ることで、安定的な成長を維持することが可能です。

定期的な評価プロセスを設けることで、事業の改善点を見つけ出し、進出の成功を持続させるための施策を実行します。

海外進出の成功ポイント

企業が海外市場で成功するためには、慎重かつ戦略的なアプローチが求められます。進出する市場に対する深い理解や信頼できるパートナーの選定、さらにリスクを最小限に抑える対策を講じることが重要です。以下では、海外進出を成功に導くための3つの重要なポイントを解説します。

市場調査の徹底

市場調査は、海外進出において最も重要なステップの一つです。

進出先の市場を正確に理解することで、競争力のある商品やサービスを提供し、ビジネスを効果的に展開することが可能です。市場調査は、進出前の戦略立案だけでなく、進出後の事業運営にも大きな影響を及ぼします。

まず、消費者のニーズや購買行動を把握しましょう。例えば、アジアや欧米市場では、消費者の価値観や商品に対する期待が大きく異なるため、現地での成功には適切な商品開発やサービス提供が求められます。また、進出先の競合状況も重要な調査項目です。競合企業がどのような戦略を展開しているか、どの市場セグメントに注力しているかを理解することで、自社がどのポジションを取るべきかを明確にできます。

さらに、法規制や税制、政治的安定性など、進出先のビジネス環境も徹底的に調査する必要があります。特に、進出先の国によっては外国企業に対する規制が厳しい場合もあり、それらに適合しないと事業運営に大きな障害が生じます。こうした外部環境に対する理解を深めることで、事前にリスクを予測し、対応策を講じることが可能になります。

進出前に行われる市場調査の質が、その後のビジネス成功を大きく左右するため、この段階での投資は決して怠るべきではありません。

適切な進出先とパートナーの選定

海外進出の成功には、適切な市場選定と現地パートナーの存在が不可欠です。

まず、進出先の市場選定では、単に市場規模が大きい国を選ぶのではなく、自社の強みが発揮できるかどうか、また、長期的に成長が見込める市場であるかどうかを慎重に見極める必要があります。例えば、新興国市場では短期間での成長が見込まれる反面、経済や政治の不安定さがリスク要因となることもあります。そのため、進出先市場の安定性や将来性、さらに自社のリソースやリスク許容度を踏まえた選定が求められます。

また、現地のビジネス環境に適応するためには、信頼できるパートナーの存在が重要です。現地の消費者ニーズやビジネス習慣に精通したパートナーと提携することで、企業は現地市場への適応をスムーズに進めることが可能となります。パートナー選定においては、単に取引の安さや規模だけでなく、信頼性やビジネス倫理、また長期的な協力関係を築けるかどうかを重視することが重要です。

さらに、進出後の事業展開をサポートするためには、物流や販売、サービス提供においても現地の強力なネットワークを持つパートナーを選ぶことが、成功へのカギとなります。適切なパートナーを選定することで、現地市場での競争力を高め、事業の成功確率を大幅に向上させることができます。

リスクマネジメントの実施

海外進出に伴うリスクは多岐にわたります。進出先の政治・経済的な不安定性や法規制の変化、文化的な違いによる労務問題など、さまざまなリスク要因に備えるためには、リスクマネジメントが不可欠です。

リスクマネジメントの第一歩は、潜在的なリスクを洗い出し、これに対する対応策を策定すること。例えば、為替リスクに対しては、為替予約やヘッジを活用してリスクを軽減することが可能です。また、現地の政治的リスクに対しては、現地政府や経済情勢の変化を常にモニタリングし、必要に応じて事業戦略を修正する柔軟性も必要となります。

さらに、進出後の事業運営においても、定期的なリスク評価と改善策の見直しが重要です。特に、現地での法規制の変化や市場環境の変化に迅速に対応するためには、現地スタッフとの密な連携や、法務・税務の専門家の助言が不可欠となるでしょう。また、進出先国のインフラ状況や自然災害に対する備えも、リスクマネジメントの一環として考慮すべきです。

現地での不測の事態に備えるため、危機管理計画(BCP:Business Continuity Plan)の策定や、現地のサプライチェーンを常に強化しておくことも、事業の安定性を保つための重要な施策となります。

海外進出における市場調査のポイント

海外進出の成否を左右する重要な要素の一つが市場調査です。

進出先の市場の特性や競争環境を的確に把握し、事業計画に反映させることが求められます。市場調査は、企業が直面するリスクを最小限に抑え、効果的な戦略を立てるための基礎情報を提供します。

ここでは、海外進出における市場調査の4つの重要なポイントについて詳しく説明します。

二次情報の活用

市場調査を始めるにあたり、まず手軽に入手できる二次情報を活用することが有効です。

二次情報とは、既に公開されている統計データやレポート、業界分析などのことを指します。この二次情報の活用は、進出に向けた初期段階でのコストを抑えつつ、広範な市場理解を得るために役立ちます。特に、進出先の経済状況、人口動態、消費者の購買行動など、進出に影響を与える要素を幅広く把握することが可能です。

例えば、総務省や外務省、日本貿易振興機構(JETRO)のような公的機関が提供するレポートは、信頼性が高く、データに基づいた戦略立案に役立ちます。

ただし、二次情報には限界もあり、一般的なデータや過去の情報に基づくものが多いため、リアルタイムでの市場変動やニッチな分野の詳細な状況を掴むには十分でない場合があります。そのため、二次情報は市場調査の初期段階での概況把握として活用するとよいでしょう。

現地調査の実施

二次情報で得られた知見を基に、さらに詳細な情報を得るためには、現地調査が不可欠です。

現地調査の目的は、実際に進出予定の国や地域を訪問し、消費者や現地企業、政府機関と直接接触することで、現地のリアルな市場状況やビジネス環境を理解すること。これは、進出先の市場特性をより具体的に把握し、進出戦略を練るために欠かせないプロセスです。

例えば、現地の消費者ニーズや購買行動を調べるためには、消費者とのインタビューやアンケート調査が有効でしょう。また、現地での流通チャネルの実態を把握するために、現地企業やサプライチェーンの視察を行うことも重要です。特に、進出先が新興市場の場合、現地の経済やインフラの発展段階に応じた販売戦略や物流手法が求められるため、現場での確認が不可欠です。

さらに、現地調査では進出先の競合状況や業界の特性を把握しなければいけません。例えば、競合企業がどのような製品やサービスを提供しているのか、価格戦略やマーケティング活動に関する情報を収集することで、自社の差別化ポイントや競争優位を見極められます。

このように、現地調査は実践的なデータを収集し、進出後のリスクを軽減するために非常に重要なステップです。

専門家の活用

海外進出を成功させるには、現地の市場を深く理解するための綿密な市場調査が不可欠です。

しかし、言語や文化、商習慣の違いが障壁となり、自社だけでは十分な情報を集められないことが多いでしょう。ここで鍵となるのが、専門家の活用です。市場調査のプロフェッショナルに依頼することで、進出国での消費者ニーズや競合の状況、そして市場の成長性に関する貴重な洞察を得ることができます。

さらに、専門家を活用することで、自社リソースの節約にもつながります。たとえば、担当者を現地に派遣して調査を行うには、時間やコストがかかるだけでなく、経験が不足している場合には得られる情報の質が低下するリスクもあります。その点、専門家は現地の事情に精通しているため、より効率的かつ信頼性の高いデータを集めることが可能です。

確かに、専門家に依頼するにはコストが発生しますが、その費用は単なる支出ではなく、海外進出の成功を左右する重要な投資です。専門家が提供する洞察は、自社の重要な意思決定を支え、担当者は他の戦略業務に集中することができるため、結果的に高い費用対効果が期待できます。

このような理由から、海外進出を検討する際には、専門家への依頼を積極的に考慮すべきです。

調査結果の分析

市場調査の最終ステップとして、収集したデータを詳細に分析し、進出戦略に反映させることが必要です。

調査結果を単に集めるだけではなく、そこから有益なインサイトを抽出し、具体的な行動計画につなげる必要があります。分析の段階では、消費者の購買パターン、価格帯、製品の受容度、競合の強さなど、多岐にわたる要素を慎重に評価しましょう。

例えば、現地消費者の購買力と自社製品の価格が一致しているか、または現地での受容性が高いかどうかを評価することで、進出後の売上予測やマーケティング戦略を構築できます。また、競合他社の動向や市場シェアの変動を分析することで、自社がどのような戦略で市場にアプローチすべきかが見えてきます。

データ分析の結果を基に、自社の強みと市場ニーズの合致点を見つけ出し、進出先で成功するための具体的な施策を策定しましょう。また、調査結果から進出リスクが高いと判断される場合には、進出計画の修正や延期を検討することも重要です。

このように、調査結果をもとにした分析を通じて、進出戦略の精度を高め、リスクを最小限に抑えられます。

まとめ

企業が海外進出を図る際、期待されるメリットは市場の拡大、コスト削減、そしてブランドイメージの向上です。

しかし、これらの成功を確実にするためには、進出前の徹底したリサーチが不可欠です。特に現地調査は、リアルな消費者行動や競合状況、提携先候補などの詳細な情報を得るための重要なステップです。デスクリサーチでは基礎的なデータは入手できますが、現地の実態を反映した具体的な洞察を得るには限界があります。

リサーチ業務には、豊富な経験と専門的なノウハウが求められ、自社で行う場合、効率的に有益な情報を集められないリスクが存在します。そこで専門家への調査依頼を強く推奨します。

弊社では、世界各国に配置された現地のリサーチャーが対象者に直接取材をし、リアルな市場データを提供します。このネットワークにより、他社に比べてコストを抑えつつ、信頼性の高い情報を収集することが可能です。

私たちは、大手企業からスタートアップ企業まで幅広く対応しており、これまでに数多くの業界で実績を積んできました。業界・規模を問わず、貴社のニーズに合わせたリサーチを提供し、期待を超える成果をお届けします。

海外進出をご検討されている企業様は、ぜひ下記フォームからお気軽にお問い合わせください。

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