【リサーチャーが解説】デスクリサーチとは?手順や成功ポイント

新製品開発や新規市場の開拓に挑戦する際、的確な市場データや競合情報をいかに迅速に収集できるかが、成功のカギを握っています。しかし、「調査に時間がかかりすぎる」「コストがかさむ」といった問題に直面していないでしょうか?

その悩みを解決するのが、デスクリサーチです。

低コストで短期間に必要な情報を手に入れ、次の戦略ステップを自信を持って踏み出せる手法として、多くの企業が活用しています。たとえば、新しい市場に進出する際に、事前に市場動向を把握できれば、無駄な投資を避け、成功への確実な一歩を踏み出せるでしょう。

本記事では、プロのリサーチャーがデスクリサーチの具体的な手順や成功のポイントを詳しく解説します。

デスクリサーチとは

デスクリサーチとは、主に既に公開されている二次情報を活用して行う調査手法のことです。フィールドリサーチのように現地調査を行ったり、対象者と直接対話するのではなく、統計データやレポート、業界分析などの既存の情報を収集・分析します。これにより、短時間で効率的に基礎情報を得ることが可能です。

例えば、新製品開発の初期段階で、いきなりユーザーインタビューを行うと、適切な質問やターゲットを見定めるのが難しいことがあります。まずデスクリサーチを通じて、業界のトレンドや消費者のニーズ、市場規模などを把握してから具体的な調査計画を立てることで、次のリサーチ段階がより効果的になるのです。

デスクリサーチは、必要な情報を迅速かつ効率的に取得できるため、現代のビジネスにおいて欠かせない調査手法となっています。これを基盤とすることで、フィールドリサーチやユーザー調査など、より詳細なリサーチへの準備を整えられます。

デスクリサーチとデスクトップリサーチの違い

デスクリサーチとデスクトップリサーチはしばしば混同されますが、実際には異なる手法です。

デスクリサーチは、広義の二次情報を活用する調査を指し、インターネット上の情報に加え、図書館の資料や政府機関の公式レポート、企業の内部資料など、オンライン・オフラインを問わず幅広い情報源を含みます。

一方で、デスクトップリサーチは主にインターネットを介して収集される情報に限定されます。例えば、GoogleやYahoo!などの検索エンジンを使った情報収集、オンラインで公開されている統計データ、ニュース記事、企業のプレスリリースが主な情報源です。

デスクトップリサーチは手軽で迅速に多くの情報にアクセスできる反面、インターネット上の信頼性の低いデータに依存するリスクも伴います。

デスクリサーチの種類

デスクリサーチは、情報の出どころや目的に応じて大きく「社内デスクリサーチ」と「外部デスクリサーチ」に分けられます。どちらの方法もビジネスにおいて有益ですが、それぞれが異なる情報源や調査対象に依存するため、目的に応じた使い分けが重要です。

ここでは、社内デスクリサーチと外部デスクリサーチの特徴についてみていきましょう。

社内デスクリサーチ

社内デスクリサーチとは、自社内に蓄積されたデータや情報を活用して行う調査手法です。

営業データやマーケティング施策の結果、顧客アンケートの集計、自社サイトのアクセスデータなど、企業が日々蓄積している内部データを再評価し、新たなインサイトを引き出すことが目的です。

例えば、過去の売上データを分析すれば、人気商品の特定や売上が増加する時期を把握できます。さらに、CRM(顧客管理システム)に保存された顧客の購買履歴や行動データを分析することで、顧客の嗜好や購買パターンを予測し、今後の製品開発やマーケティング活動の戦略に活かせます。

社内デスクリサーチの最大のメリットは、自社の実績に基づいたデータであるため、特定のビジネスニーズや製品に直接関連する、実践的かつ具体的な示唆を得やすい点です。また、外部データに比べて独自性が高く、競合他社にはアクセスできない情報であることから、競争優位性を維持するためにも重要です。これにより、自社の強みや市場での独自のポジショニングを確認することが可能です。

ただし、社内データの限界もあります。内部データだけでは市場全体の動向や業界トレンド、顧客ニーズの変化を完全に把握することが難しい場合があります。ビジネス環境が急速に変化する中で、新しい市場機会や顧客の潜在ニーズを見逃すリスクがあるため、外部データと組み合わせて活用することが効果的です。

外部デスクリサーチ

外部デスクリサーチは、自社外部の情報源を活用して行う調査手法です。

競合分析や市場動向の把握において重要であり、政府機関の統計データ、業界団体のレポート、企業の財務報告書、学術論文、新聞記事、SNSのトレンド分析など、さまざまな外部データを活用します。

例えば、政府が発表する消費者統計や経済指標を活用すれば、特定市場の全体像や経済環境を俯瞰でき、今後の市場成長予測に役立ちます。また、競合他社の財務報告書やプレスリリースからは、競合の経営戦略や財務状況、今後の展望を把握でき、競争優位性を強化するための参考材料となります。

外部デスクリサーチの主なメリットは、広範な視野で市場全体の動向や新しいトレンドに対するインサイトを得られることです。自社がまだ参入していない新興市場や海外市場に関するデータは、外部の公開情報が非常に有用で、新規事業や拡大戦略を策定する際に不可欠です。

また、外部データを利用することで、社内のリソースだけでは得られない情報にアクセスでき、市場の変化に対応するための基盤構築を行えます。

ただし、外部データにはいくつかの注意点もあります。

まず、公開情報は誰でもアクセスできるため、競合も同様のデータに基づいた戦略を立てている可能性があることです。また、信頼性の低い情報源や古いデータに依存すると、誤った判断を下すリスクがあります。そのため、外部データを活用する際には、信頼性の高い情報源を選び、最新のデータを優先して収集し、慎重に分析することが重要です。

外部デスクリサーチは、社内データと組み合わせて使うことで、より総合的で強力なリサーチ手法となり、より精度の高い意思決定を可能にします。

デスクリサーチのメリット

新規市場への参入、競合分析、新製品の開発などあらゆる企業活動がありますが、それらのファーストステップはデスクリサーチであるべきです。ここでは、デスクリサーチのメリットをご紹介します。

コスト効率の高さ

デスクリサーチの最大のメリットの一つは、そのコスト効率です。

フィールドリサーチのように現地での調査を行う場合、調査対象者への報酬や交通費、調査設計にかかるコストが発生しますが、デスクリサーチでは既存の公開データを利用するため、これらの費用を大幅に削減できます。

例えば、政府機関が提供するデータや業界レポート、企業の財務情報は無料で利用可能です。特に中小企業やスタートアップ企業は、リソースが限られているため、こうした無料のデータを活用することで、高額なリサーチ費用を避けながら、必要な市場情報を入手できます。

また、SNS分析や自社サイトのユーザーデータの解析も簡単に行えます。こうしたデジタルリソースを駆使すればマーケティングや製品開発のインサイトを得るためのコストを最小限に抑えつつ、最大限の効果を得られるのです。

迅速なデータ取得

デスクリサーチは、従来のフィールドリサーチと比べて、圧倒的に迅速な結果を得られる点が大きな強みです。

フィールド調査では、対象者の設定やアンケートの準備、結果の収集に時間がかかりますが、デスクリサーチはすでに存在するデータを使用するため、調査開始から結果取得までのプロセスが短縮されます。

例えば、新市場に参入する際に現地調査を行えば、数週間から数カ月の時間がかかることがありますが、デスクリサーチを活用すれば、公開されている統計データや市場レポートを数時間で集め、意思決定に役立てることが可能です。

特に、市場の変化が激しい業界や急速に進化するテクノロジー分野では、このスピード感が競争力の源となります。

包括的な市場洞察を得られる

デスクリサーチは、広範な情報源にアクセスできるため、包括的な市場洞察を得られます。

複数の情報源を組み合わせることで、単一のデータに依存せず、より多角的な視点から市場を分析できます。これにより、消費者トレンドや競合分析、市場の成長予測といった、さまざまな重要な洞察を導き出すことが可能です。

例えば、政府統計や業界レポートなどの公式データに加え、競合の財務報告書、ニュース記事、さらにはSNSでの消費者のフィードバックを組み合わせて分析することで、市場の全体像や消費者ニーズの詳細な把握を行えます。

こうした包括的な情報は、新規市場参入時や製品開発の方向性を定める際に重要な判断材料となるでしょう。

また、デスクリサーチは異なる市場や地域の比較にも適しています。複数の国や地域における市場動向を比較分析し、地域ごとの特性や成長の可能性を評価する際に、国際機関や現地の統計データを活用することで、グローバルな市場戦略をより効果的に立案することが可能です。

デスクリサーチのデメリット

デスクリサーチには多くのメリットがある一方で、見落としがちなデメリットも存在します。これらの課題を理解し、適切に対処することが、成功を左右する鍵となります。主なデメリットとして、信頼性の問題、情報の鮮度不足、そして特定のデータにアクセスできないという点が挙げられます。各デメリットの詳細を見ていきましょう。

情報の信頼性の問題

デスクリサーチはインターネット上の情報や公開された資料など、二次情報を基に行われますが、信頼性に欠ける情報に惑わされるリスクがあります。誰でも容易に情報を発信できる現代では、誤情報や意図的に操作されたデータが混在し、これに基づいた意思決定は大きなリスクを伴います。

例えば、個人ブログやSNSで発信されるデータは偏っていることが多く、商業目的の業界レポートやスポンサーの影響を受けた記事も、その背後にある意図を慎重に読み解かなければいけません。特に、明確なエビデンスがないまま主張が展開されている情報には注意が必要です。

デスクリサーチにおいては、信頼性の高い情報源を見極めることが不可欠です。政府機関の統計データや業界団体のレポートは、比較的信頼できる情報源として活用できます。

しかし、一つの情報源に依存するのはリスクが大きいため、複数の異なるソースから情報を集め、互いに照らし合わせてデータの一貫性を確認しましょう。たとえば、同様の結論が異なる出典から得られる場合、その情報は信頼性が高まります。

情報の古さ

デスクリサーチでは、公開された過去のデータを使用するため、その情報が最新でない可能性は十分にあります。

急速に変化する市場では、古いデータを基にした分析は現状に適合しないことが多く、ビジネスの意思決定に悪影響を招くでしょう。例えば、変化の激しいテクノロジー業界では、たったの1年で状況が一変します。

この問題に対処するためには、最新のデータを使用することが重要です。

業界レポートやニュースサイト、SNS分析といったリアルタイムデータを活用し、常に最新の情報を把握することで、変化に即応できる意思決定が可能となります。また、情報の公開日を必ず確認し、データの鮮度をチェックする習慣を身につけましょう。

特定の情報を得られない可能性

デスクリサーチでは、公開されている情報しか利用できないため、機密性の高いデータや詳細な内部情報にはアクセスできません。

例えば、競合他社の具体的な戦略や顧客インサイトに関する詳細なデータは、公開されることがほとんどなく、これを得るためには追加のリサーチ手段が必要となります。競合分析を行う際も、プレスリリースやウェブサイト上の情報だけでは、全体像を把握するには不十分です。

この限界を補うためには、一次情報の収集が有効です。フィールドリサーチや顧客インタビュー、業界の専門家へのインタビュー、独自のアンケート調査を実施することで、デスクリサーチだけでは得られない具体的で詳細なデータを取得できます。

リサーチャーがデスクリサーチでよく使う情報源

デスクリサーチのメリットは、迅速に意思決定の基盤となるデータを収集できることです。このメリットを享受するためには、事前にどこにどのような情報があるのかを把握し、信頼性の高い情報を得なければいけません。市場の全体像、競合の動向、そして顧客インサイトを包括的に把握するためには、様々な情報源を適切に組み合わせなければいけません。

ここでは、デスクリサーチでよく利用される代表的な情報源を紹介します。

1. 業界団体や政府機関の統計データ

業界団体や政府機関が提供する統計データは、高い信頼性を持つ情報源です。

これらのデータは客観的であり、ビジネス戦略の基礎となる市場分析や経済環境の理解に役立ちます。例えば、総務省や経済産業省が発表する各種統計や報告書は、日本国内の経済状況や消費者行動の変化を捉えるための重要な資料となります。

また、業界団体のレポートは、特定の業界における最新のトレンドや技術革新を深く理解するために役立ちます。例えば、日本自動車工業会が提供する自動車市場レポートは、国内外の市場動向を把握するために欠かせない資料です。

さらに、OECDやIMFといった国際機関のデータも、グローバル市場を視野に入れた戦略策定のために必要不可欠です。業界団体や政府機関のデータは、信頼性と客観性に優れた情報源であり、短期的な戦略から長期的な事業計画まで、幅広く活用されます。

2. 専門家による業界レポート

コンサルティングファームや市場調査会社が発行する業界レポートは、特定分野の専門家による深い分析が含まれており、戦略立案において有用です。

たとえば、マッキンゼーやボストン・コンサルティング・グループといった大手ファームのレポートは、業界の現状や今後のトレンド、競合の動向など、ビジネス上の意思決定に必要な詳細なデータやインサイトを提供してくれます。

さらに、IT業界に特化したガートナーやフォレスターのような調査会社が発行するレポートは、最新のテクノロジー動向や市場のイノベーションに関する洞察を提供するため、企業は新しいテクノロジーの採用やデジタル戦略の策定に必要な情報を得られるでしょう。

業界レポートは、単なるデータの提供にとどまらず、専門家による深い分析や将来の予測が含まれており、企業がリスクを回避し、競争優位を築くための指針となります。

3. 競合他社の公開情報

競合他社が公開する情報も、デスクリサーチでは重要な情報源の一つです。

企業のウェブサイトやプレスリリース、財務報告書などからは、その企業の戦略やパフォーマンスを把握できます。特に、上場企業の決算報告書は、経営戦略や市場動向を知るために不可欠な資料です。

また、プレスリリースは新製品の発表や事業展開の計画を知るためのリアルタイムな情報源です。これを継続的にチェックすることで、競合他社の動向やビジネスの方向性を予測し、適切な対応策を講じられるようになります。

4. 学術論文や専門誌

特定のテーマや業界に関する深い洞察を得るには、学術論文や専門誌の活用が効果的です。

学術論文は、技術革新や産業の進化に関する最新の研究成果を提供し、新しい理論的枠組みや独自の視点を得られます。たとえば、新しい技術トレンドを取り入れたビジネス戦略の構築や、業界の変化に対応するための理論的な裏付けとして活用できます。

一方、専門誌は、業界の最新の動向やベストプラクティスを提供します。成功事例や失敗事例が豊富に紹介されているため、自社の戦略に役立つインサイトや業界での競争優位性を確立するための具体的なヒントを得られます。

このように学術論文や専門誌を活用することで、企業は業界内外の技術革新や市場の変化にいち早く対応し、長期的な戦略を強化するための基盤を築くことが可能です。

5. 新聞・メディア記事

新聞やメディアの記事は、最新の業界トレンドや企業の動向をリアルタイムで追跡するために重要な情報源です。特に、経済新聞やビジネス誌は、速報性の高い情報を提供しており、企業ニュースや市場変動、政府の政策変更など、短期的な意思決定が必要な場合に役立ちます。

例えば、新製品の発表や企業の合併・買収といったニュースを即座に把握できるため、競合の動きを素早く反映した戦略の調整が可能です。また、市場の急激な変動やトレンドの変化をいち早く掴むことで、マーケティングや営業活動に迅速に対応できます。

さらに、特集記事や分析記事では、業界全体の背景やリスク要因についての深い洞察が得られるため、長期的なビジネス戦略を考える際にも重要な参考材料となるでしょう。

新聞やメディアは、リアルタイムで変化する情報を提供する点で、他のリサーチ手法と組み合わせて活用することで、より強力な情報収集が可能となります。

6. 自社データ

デスクリサーチにおいて、社内に蓄積された自社データは極めて重要な情報源となります。売上データ、顧客フィードバック、Web解析データ、CRMシステムの履歴などは、外部の二次情報と組み合わせることで、より深い洞察を得ることが可能です。

例えば、売上データを分析することで、過去の売れ筋商品や市場の季節的な動向を把握し、次に狙うべきタイミングや製品カテゴリを見極められます。さらに、顧客フィードバックや購買履歴を組み合わせれば、顧客のニーズや行動パターンを詳細に理解し、それに応じた製品機能やマーケティング戦略を構築することが可能です。

また、Web解析データを利用して、オンラインでの顧客の関心や行動を分析し、ターゲット市場のニーズをより深く把握できます。こうしたデータは、新規市場への効果的な参入戦略や、製品の販売チャネルの最適化に役立ちます。

自社データは、外部データにはない独自の洞察を提供し、企業が新製品や新市場に対して競争力を高めるための重要なヒントを与えてくれます。これを基にしたリサーチは、リスクを最小限に抑えつつ、成功への道筋を明確にするための強力な武器となるでしょう。

デスクリサーチの手順

デスクリサーチを効果的に実施するためには、明確なプロセスを踏むことが重要です。ここでは、調査の精度を高め、ビジネス上の意思決定に役立つ5つのステップを解説します。

STEP 1:調査目的の明確化

まず最初に、調査の具体的な目的を明確にすることが最も重要です。限られた時間の中で、全ての情報を得ることは不可能です。「何を知りたいのか」「その情報が意思決定にどう役立つか」を具体的に定めることで、調査の方向性が明確になり、効率的な情報収集が可能になります。

具体的な目標設定の例として、「新市場への参入」を挙げると、単に「市場を知りたい」という漠然とした目的ではなく、「特定の地域での市場成長率や消費者ニーズ、主要な競合の戦略を理解する」といった形で、具体的なリサーチテーマを設定します。

さらに、「その市場の成長性は3年間でどれだけ期待できるのか」「消費者はどのような製品を求めているのか」といった具体的な質問を立てることで、情報収集の焦点を絞り込めます。

このように調査目的を明確に設定することで、必要なデータやリサーチ手法が自然と導かれ、効率的かつ効果的な調査を進められます。

STEP 2:情報源の選定

次に、調査目的に基づいて信頼性の高い情報源を選定します。適切な情報源を選ぶことで、調査結果の精度と信頼性が大きく向上します。政府機関や業界団体の公式統計データ、コンサルティングファームのレポート、競合他社の公開情報など、調査の目的に合った複数の情報源を活用することが重要です。

たとえば、競合分析を行う際には、競合企業のプレスリリースや財務報告書を通じて、その企業の戦略や経営状況を把握します。さらに、業界レポートを組み合わせることで、競合が属する業界全体のトレンドや市場規模も見えてきます。

一方で、技術トレンドの分析を目的とする場合は、学術論文や専門誌が有力な情報源です。これらは、新しい技術の研究動向や革新に関する詳細なデータを提供してくれるため、企業が新たな技術を採用する際の意思決定をサポートします。

複数の情報源を組み合わせることは、データの信頼性を向上させるためにも重要です。たとえば、政府統計データと業界レポート、さらには競合の公開情報を比較することで、各データの一貫性や相違点を確認でき、データの裏付けを強化できます。

異なる視点やデータを統合することで、調査の精度を高め、より正確な意思決定を行えるようになります。

STEP 3:情報収集

選定した情報源から、具体的にデータを収集するステップに移ります。

ここでは、調査目的に合致したデータに集中し、効率的かつ正確な情報を収集することが求められます。

競合の製品分析を行う際には、まず競合企業の公式ウェブサイトで製品仕様や価格を確認しましょう。

次に、消費者レビューサイトやSNSのコメントを調査し、実際のユーザーがどのような評価をしているかを把握します。これにより、製品の市場での受け入れ状況や、強み・弱みが明らかになります。

さらに、業界レポートを活用して、競合製品が市場全体でどのくらいのシェアを持ち、どの消費者層がターゲットとなっているかといった定量的なデータを集め、競合製品の立ち位置を理解することも重要です。

情報収集では、データの信頼性の確認も欠かせません。情報の出典元が信頼できるか、データがいつ発表されたものかを確認し、古い情報に依存しないように注意します。

こうして集めたデータを体系的に整理することで、次の分析ステップへと進む準備が整います。

STEP 4:収集データの分析

デスクリサーチでは、誰でもほぼ同じ情報源にアクセスできるため、情報そのものではなく、分析結果で差別化を図ることが求められます。重要なのは、収集したデータをどのように統合し、そこから信頼性の高い結論を導き出すかというプロセスです。

まず、複数の情報源から得たデータを統合し、整合性や矛盾を慎重に確認することが重要です。例えば、競合他社の市場シェアを分析する際、業界レポート、競合の財務報告書、消費者調査データなど、異なる情報源からのデータを比較し、共通のトレンドやパターンを見つけ出します。データが一致することで、その結論の信頼性が高まります。一方で、異なる情報源で不一致が見られる場合、その原因を特定し、情報の妥当性を再検討します。

データ分析の際には、単なる数値の羅列にとどまらず、ビジネスに与える具体的な影響を掘り下げることが不可欠です。市場シェアの増減がどの程度収益に影響するのか、消費者ニーズの変化が新製品や既存製品の戦略にどのように影響を与えるかなどを分析します。この段階では、売上、競合優位性、コスト構造の変化など、多面的な視点でデータを評価することが必要です。

さらに、定量分析と定性分析のバランスも重要です。定量データを用いてトレンドや市場の成長性を数値で示す一方、顧客フィードバックや市場の反応といった定性的データからは、競合他社との差別化ポイントや顧客満足度の高い要素を見つけ出せます。これにより、数字の裏に隠された消費者行動や心理を読み解き、より深いインサイトを得られるのです。

最終的には、これらの分析結果を整理し、調査目的に沿った具体的な結論を導き出すことが、ビジネスの意思決定に不可欠な基盤を形成します。データの統合と分析の精度を高めることで、競合との差別化を図り、最適な戦略を導き出すことが可能です。

STEP 5:レポート作成

最後に、分析結果を分かりやすくレポートにまとめます。単にデータを提示するだけでなく、調査結果から導き出されたインサイトや今後のアクションプランを示すことで、意思決定に直結するレポートを作成しましょう。

例えば、新規市場開拓に関するレポートでは、「この市場は今後3年間で年平均6%成長する可能性があり、競合他社Bはこの市場の20%のシェアを保持している」といった具体的な結論を示します。

さらに、この結論を裏付けるデータをグラフやチャートなどの視覚的な形式で表現することで、意思決定者がデータの背景を深く理解し、実際の戦略や行動に反映させやすくなるでしょう。

重要なのは、調査結果がどのようにビジネスの意思決定に貢献するかを明確にすることです。データの裏付けがあるインサイトとともに、具体的なアクションが提案されているレポートは、意思決定者にとって信頼できる道筋となり、速やかに次のステップへと移行する助けとなります。

デスクリサーチの注意点

デスクリサーチを成功させるためには、いくつかの重要な注意点を押さえることが必要です。特に、情報の信頼性や最新性を確認し、偏りのない分析を心がけることが調査の精度を高めます。以下、デスクリサーチで注意すべき4つのポイントを紹介します。

1. 情報の信頼性を確認する

デスクリサーチの最大のリスクは、信頼性の低い情報を基に意思決定を行うことです。

インターネット上には、信憑性の低いデータや偏った見解が溢れているため、情報の出典や作成者を常に確認する習慣を持つようにしましょう。

信頼性を確認する際には、出典元の権威性や、複数の情報源で同じ内容が確認できるかをチェックします。たとえば、同じデータが政府統計や業界レポートの双方で裏付けられている場合、その情報の信憑性は高いといえます。

逆に、個人のブログや無名のニュースサイトは偏りがある可能性が高いため、慎重に扱うべきです。

2. 情報の最新性を確保する

変化の激しい市場や業界では、古いデータに基づく意思決定は誤った結論を導くリスクがあります。たとえば、技術やトレンドが急速に進化するテクノロジー業界では、1年前のデータですら時代遅れになっていることがあります。

このため、収集するデータの発行日や公開日を必ず確認し、可能な限り最新の情報を使用することが推奨されます。たとえば、リアルタイムで更新されるオンラインのデータソースや、最新の業界レポートを定期的にチェックする習慣をつけると、常に現状に即したデータを基にした意思決定が可能になります。

3. 情報の偏りを避ける

複数の視点から情報を収集することで、データの偏りを避けることができます。ひとつの情報源に頼りすぎると、偏った結論に至るリスクが高まるため、異なる出典や視点から情報を集めることが大切です。

例えば、競合分析では、企業の公式発表だけでなく、消費者レビューや業界全体のレポートを併用することで、より客観的かつ包括的な見解が得られます。また、売上データや市場シェアなどの定量的なデータだけでなく、顧客の評価やブランドの評判といった定性的なデータも取り入れることで、バランスの取れた意思決定が可能です。

4. 一次情報の取得を検討する

繰り返しになりますが、デスクリサーチで得られる情報は二次情報であり、これは誰もがアクセスできるため、差別化を図るのは難しいです。そこで、デスクリサーチ後に差別化を図るためには、自社独自の「一次情報」を取得するようにしましょう。

一次情報とは、自らのフィールドリサーチやインタビュー、アンケート調査などを通じて直接収集する情報のことです。例えば、顧客インタビューを行い、顧客の本音や製品に対するニーズを明確にしたり、新しい市場の現地調査を通じて実際の競合状況や消費者行動を把握することで、他社にはない深いインサイトを得られます。

デスクリサーチを活用しつつ、最終的には独自の一次情報を取得して差別化を図ることで、ビジネスの意思決定において大きな優位性を確立することができます。

まとめ

デスクリサーチは、低コストで素早く市場や競合状況を把握できる手法として、多くの企業が新規事業や市場拡大に活用しています。特に、コストを抑えつつビジネスチャンスを探りたい企業にとって、デスクリサーチは最初の一歩として理想的です。

ただし、適切なデスクリサーチを実施するにはスキルや経験が不可欠です。誤った情報に基づく判断は、施策の混乱や失敗を招くリスクがあります。

弊社のデスクリサーチサービスでは、経験豊富なリサーチャーが短期間で信頼性の高いデータを提供し、次のステップに進むかどうかの判断を迅速にサポートします。これにより、時間やコストを節約しながらも、必要な情報をしっかりと入手することが可能です。

「多額の投資をする前に、まず市場の状況を把握したい」「競合の動向を確認してから次の一手を考えたい」といったニーズに最適なソリューションを提供します。初期段階でコストを抑え、今後のリサーチの必要性や方向性を明確にするために、ぜひお気軽にお試しください。

さらに、消費者や企業の購買担当者、競合のキーパーソンへの直接インタビューを通じて、競争優位性につながる一次情報を獲得するサービスもご提供しております。詳細については、以下のリンクからお問い合わせください。

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