リサーチャーが解説!新規事業開発のリサーチ手法と失敗しないポイント

新規事業を成功に導くためには、適切なリサーチが成否を分けます。しかし、誤った方法でリサーチを行うと、得られるはずの成果が逆にリスクを招く可能性があるのです。

アメリカの食品企業「クアカーオーツ」は市場で人気を博していた「Snapple」ブランドを買収後、企業側の都合でブランドイメージを変更した結果、Snappleは消費者の信頼を失い、事業は大失敗に終わりました。

このように成功した企業の裏には多くの失敗した事業があり、その大半がリサーチ不足に原因があるといっても過言ではありません。それでは、新規事業開発の際、どのようなリサーチをすればよいのでしょうか。

本記事では、新規事業開発におけるリサーチの重要性や必要な視点、手法、失敗しないポイントを現役リサーチャーが分かりやすく解説します。

新規事業開発におけるリサーチの重要性

新規事業を成功させるには、綿密なリサーチが不可欠です。リサーチを軽視すれば、事業が市場に受け入れられず失敗するリスクが高まります。ここでは、リサーチが新規事業にとって重要である3つの理由を説明します。

1. 市場ニーズの把握でリスクを最小限に抑える

新規事業を成功させるために、最も重要なのは、ターゲット市場が実際に何を求めているかを深く理解することです。

マーケティングの父フィリップ・コトラー氏は、「マーケティングとは、売りたいものを売ることではなく、何を作るべきかを理解することだ」と述べており、顧客のニーズを正確に把握し、それに応じたソリューションを提供することが成功の鍵であると強調しています。

技術的にどれほど優れた製品であっても、顧客がその価値を認識しなければ、売り上げにはつながりません。たとえば、2010年代に登場した多くのスマート家電は、その技術の先進性にもかかわらず、消費者にとって「必要性が薄い」と判断され、市場での成功を収められませんでした。

こうした失敗を避けるためにも、事前の市場リサーチは不可欠です。リサーチを通じて、顧客が抱える課題や不満点を把握し、それに対応する製品やサービスを開発することで、リスクを最小限に抑えられます。このプロセスにより、無駄な投資や時間の浪費を防ぎ、ビジネスの方向性を明確にできるのです。

市場の声に耳を傾け、顧客が本当に求めているものを正確に掴むことが、事業の成功に直結する重要なカギとなります。

2. データに基づく意思決定で成功率を向上

成功する事業の裏には、確固たるデータに基づいた意思決定があります。

市場規模や成長性、顧客の購買行動といった要素をデータで正確に把握し、それに基づいて戦略を練ることで、成功の確率は大幅に向上します。データを活用すれば、感覚や直感に頼ったアプローチと比べて、リスクを大幅に減らせるのです。

例えば、新市場に参入する際、過去の市場データや成長予測を分析することで、投資のタイミングや規模を最適化できます。また、既存の顧客データを精査し、リピーターが特に好む商品やサービスに焦点を当てれば、顧客満足度をさらに向上させられるでしょう。

データ活用のポイントは、定量データと定性データの両方を組み合わせて活用することです。

アンケートやインタビューによって得られる顧客の感想や意見(定性データ)は、新しい商品のニーズや改善点を見出すのに役立ちます。一方、購買履歴や市場成長率といった定量データは、どの市場にリソースを集中すべきかを定量的に示してくれます。これにより、製品やサービスがどのように市場に浸透し、どの価格帯で最も受け入れられるかという明確な指針を得られるのです。

3. 競合他社との差別化を図る

市場での競争が年々激化する中、自社を競合から際立たせるための差別化は不可欠です。

競合他社がどのような強みや弱みを持っているのかを徹底的に分析し、リサーチを通じて自社がどこで優位性を発揮できるかを見極めることが、成功へのカギとなります。

Netflixはその典型的な成功例です。ビデオレンタルという既存の市場で、競合他社が行っていたDVDレンタルサービスに依存せず、いち早くストリーミングサービスを導入することで、全く新しいユーザー体験を提供しました。この差別化戦略は、顧客の利便性を大きく向上させ、業界全体の消費行動を変革しました。

差別化を実現するための第一歩は、顧客が本当に求めている付加価値を発見することです。

リサーチを通じて、顧客がどのような問題を抱えているか、何に不満を感じているかを把握し、その解決策を提供することで競合に対して優位性を築けます。

また、差別化は単に製品やサービスの機能に留まりません。ブランド体験や顧客サービスといった要素も、他社との差別化に寄与します。たとえば、Zapposは競合他社と比べて充実したカスタマーサポートを提供し、顧客満足度を高めることで市場での地位を確立しました。

差別化は、競争が激しい市場において生き残るための重要な戦略であり、価格競争に巻き込まれずに持続的な成長を実現するための有力な手段です。競合他社と同じことをするのではなく、顧客にとって「唯一無二」と感じさせる価値を提供すること、これが長期的な成功をもたらす鍵となります。

新規事業に必要な4つのリサーチ

新規事業開発において、リサーチはあらゆる側面から多角的に行う必要があります。単に市場の動向を追うだけではなく、顧客のニーズ、競合の状況、そして技術の進化など、事業に影響を与えるあらゆる要素を調査することで、成功確率を高められます。

ここでは、新規事業において特に重要な4つのリサーチについて見ていきましょう。

市場リサーチ:市場の規模、消費者行動、トレンドを把握する

新規事業を成功させるために、最初に取り組むべきことは徹底した市場リサーチです。市場の規模や成長性、消費者の行動パターン、さらには市場トレンドを把握することで、どのような戦略を採るべきかが明確になり、成功への道筋が見えてきます。

例えば、シェアリングエコノミーの台頭は、従来の「所有」モデルに依存していたビジネスに大きな影響を与えました。UberやAirbnbは、ただ技術革新に頼ったわけではありません。彼らの成功は、市場リサーチを通じて「所有」から「共有」へと変化する消費者の価値観や行動をいち早く捉え、それに基づいて柔軟なサービスモデルを展開した結果です。市場の変化を正確に理解し、それに対応することで、彼らは競合を凌駕するポジションを築きました。

市場リサーチを行う際に特に重要な3つの要素は以下の通りです。

  • 市場の規模と成長性:どれだけの市場が存在し、今後の成長が見込まれるかを把握。
  • 消費者の行動パターン:顧客がどのような商品やサービスを、どのタイミングで選ぶかを調査。
  • 市場トレンドの変化:現在のトレンドと、それに基づく新しいニーズや機会の特定。

これらの要素を徹底的にリサーチし、その結果に基づいて戦略を立てることで、事業の成功率を大きく高められます。

競合リサーチ:競争環境の理解と自社のポジショニング

競合リサーチは、競争が激化する市場で自社の立ち位置を確立するために不可欠です。

自社の製品やサービスを競合他社と比較し、どこで優位に立てるかを見極めることが、持続的な成長を支える鍵となります。競合リサーチを行うことで、競合の強みや弱み、未対応のニーズを明確にし、差別化戦略の立案を行えます。

競合リサーチを行う際には、以下3つの視点に注目することが重要です。

  • 競合他社の製品・サービスの特徴:競合の強みや弱みを把握し、自社のポジションを明確化
  • 競合のマーケティング戦略:どの顧客層をターゲットにし、どのようなプロモーションを行っているかを分析
  • 競合の対応できていないニーズ:市場の隙間を見つけ、付加価値を提供する方法を模索

これらの要素を深く掘り下げて分析すれば、競争の激しい市場でも自社の存在感を際立たせ、持続的な成長を実現するための戦略を構築できます。

顧客リサーチ:潜在顧客と既存顧客のニーズを徹底分析

顧客リサーチは、事業の成功を左右する最も重要なプロセスの一つです。

新規事業の立ち上げや既存事業の成長には、潜在顧客と既存顧客の両方のニーズを正確に把握する必要があります。顧客の期待に応えた製品やサービスを提供するためには、徹底したリサーチによって潜在的な課題やニーズを明らかにし、それに対応した戦略を打ち立てる必要があるのです。

Appleは新製品の開発にあたり、顧客のフィードバックを継続的に集め、それを次世代の製品に反映させることで、常に顧客のニーズに応える製品を提供しています。これにより、Appleは高い顧客満足度と強いブランドロイヤルティを維持しているのです。

また、顧客リサーチは潜在顧客と既存顧客それぞれに対して異なるアプローチを取るべきです。

潜在顧客とは、まだ自社の製品やサービスを利用していない顧客層を指します。この層に対しては、彼らが現状どのような問題や不満を抱えているかを深掘りし、自社がどのような価値を提供できるかを明らかにすることが重要です。

一方、既存顧客からのフィードバックを基にしたリサーチは、製品やサービスの改善に直結します。

既存顧客はすでに自社の製品やサービスを利用しているため、どこに満足しており、どこに改善が必要かを直接知ることができます。たとえば、アンケートや顧客サポート履歴の分析を通じて、既存顧客が感じる課題を特定し、その解決策を開発することが可能です。

技術リサーチ:最新の技術トレンドと革新を捉える

技術リサーチは、新規事業の競争力を左右する重要な要素です。

特に技術革新が急速に進む現代において、最新の技術トレンドを把握し、適切なタイミングで導入することは、競争優位を築くために不可欠です。これを怠ると、時代遅れの技術やアプローチに依存し、競合に遅れを取る可能性があります。

例えば、AIやブロックチェーン技術は、近年のテクノロジー革新の中心的な存在です。企業がこれらの技術を積極的に取り入れることで、業務の自動化、データ解析能力の向上、透明性の高い取引システムの導入など、競争力の強化に成功しています。

CRM(顧客関係管理)システムを提供するHubSpotは、生成AIの開発企業を買収し、自社ソフトウェアにその技術を反映しているのです。これにより、最新トレンドに取り組みながら、競合他社との差別化に成功しています。

技術リサーチで注目すべき3つのポイントは以下の通りです。

  • 新技術の動向:最新の技術がどのように事業に活かせるかを調査
  • 技術トレンドの追跡:AI、IoT、ブロックチェーンなど、次世代の技術が業界に与える影響を分析
  • 特許や知的財産のリサーチ:競合がどのような技術や特許を持っているかを確認し、自社の技術戦略を構築

技術リサーチを徹底的に行うことで、競争が激しい市場でも差別化を図り、長期的な成長を支えるための新しいビジネスチャンスを見出せるでしょう。

既存事業を新市場に展開するために必要な3つのリサーチ視点

既存の事業や市場での経験をそのまま持ち込んでも、新市場特有の文化、競争環境、規制に適応できなければ失敗するリスクが高まります。ここでは、新市場進出に際して特に重要となる3つのリサーチ視点を解説します。

1. ターゲット市場の規模と成長性分析

まず、新市場がどれだけの規模を持ち、将来的にどの程度の成長が見込まれるかを把握することが重要です。市場規模や成長性を理解すれば、参入のタイミングや戦略を的確に計画できるようになります。

  • 市場規模の把握:新市場がどのくらいの規模を持っているかを定量的に測定します。市場が小さすぎれば、収益性が低くなるリスクがありますし、市場が大きすぎても競争が激化してしまう可能性があります。
  • 成長性の分析:市場の過去の成長率や将来の予測データを調査します。特に、人口増加や技術革新などのマクロ経済要因が市場成長にどう影響を与えるかを分析することが重要です。たとえば、若年層の増加が著しい市場は、将来の消費需要が高まる可能性があります。
  • セグメント分析:市場全体だけでなく、特定のターゲット層(年齢層、収入層、地域など)に焦点を当て、自社の強みを最大限に発揮できるセグメントを特定します。例えば、高価格帯のプレミアム商品が好まれる地域を狙うなど、細かな市場戦略が重要です。

適切な市場規模と成長性の分析によって、どの市場にリソースを投入すべきかを判断し、無駄な投資を避けられます。

2. 競争環境と市場参入の障壁の評価

新市場には必ず既存の競合が存在します。

競争環境を正確に理解し、参入の際にどのような障壁があるのかを見極めることで、自社がどのようなポジショニングを取るべきかが明確になります。

  • 競争環境の把握:主要な競合企業の市場シェア、製品やサービスの特徴、ビジネスモデルなどを分析します。すでに市場に強い影響力を持つブランドや、現地の独自のビジネス慣行が存在する場合、差別化のポイントを探すことが重要です。例えば、低コスト戦略が強みの現地企業に対しては、価格競争ではなく品質やサービスでの差別化が求められます。
  • 市場参入の障壁:法的規制、特許、現地のビジネス慣行、税制、物流インフラの整備状況など、参入を阻む要因を事前に理解することが重要です。特定の国や地域では新規参入企業に対して厳しい法的制約や関税が存在するため、これらのハードルをクリアするための方策を練る必要があります。
  • 競争優位性の発見:自社が新市場においてどのように競争優位を発揮できるかを分析します。製品の品質、価格設定、技術、カスタマーサービスなど、さまざまな要素で差別化を図ることが考えられます。たとえば、特に技術に強みがある企業は、それを前面に押し出して競合との差を明確にすることが効果的です。

競争環境と参入障壁を徹底的にリサーチすることで、自社の進出戦略を最適化し、競争に勝つための計画の立案を行えます。

3. 文化的・規制的要因のリサーチ

文化や規制の違いは、事業展開に大きな影響を与えます。

新市場では、既存市場とは異なる消費者行動や価値観が存在するため、これを無視した展開は失敗を招きやすいです。また、現地の法規制に準拠することも重要です。

  • 文化的要因のリサーチ:新市場の消費者の価値観やライフスタイル、購買行動などを調査します。たとえば、食文化が異なる市場では、現地の味覚や食習慣に適応した製品を提供する必要があります。また、製品が現地文化にどれだけ受け入れられるかを理解するために、現地の消費者インサイトを深掘りすることが重要です。
  • ローカリゼーションの必要性:製品やサービスを現地に適応させる「ローカリゼーション」が求められます。これは単に言語の翻訳にとどまらず、消費者の嗜好に合わせた商品設計やマーケティング戦略の調整が必要です。
  • 規制的要因のリサーチ:現地の法律や規制もリサーチ対象です。製品の品質基準、環境規制、労働法、税制などが自社の事業にどう影響を与えるかを調査します。これにより、法的リスクを最小限に抑えた上で円滑に事業を展開できるようになります。現地の弁護士や専門家と連携することも有効な手段です。

文化的要因と規制を正しく理解し、それに対応したビジネスを展開することで、新市場での成功率を高められます。

新規事業・サービス開発に必要なリサーチ視点

新規事業やサービスの開発において、成功の鍵を握るのは、顧客や市場の深い理解に基づいた適切なリサーチです。単なる製品やサービスの提供にとどまらず、未解決のニーズを発見し、顧客の期待に応え、エキスパートの洞察を活用することで、競争優位性を確立できます。

以下に、新規事業・サービス開発に不可欠な3つのリサーチ視点を紹介します。

1. 市場のギャップや未解決ニーズの発見

どの市場にも、既存の製品やサービスでは対応しきれていないギャップや、消費者が抱える未解決のニーズが存在します。これらを発見し、革新的なソリューションを提供することができれば、新規事業での成功率を高めることが可能です。まずは、ギャップや未解決ニーズの発見、イノベーション機会を特定する方法を見ていきましょう。

ギャップの特定

市場のギャップとは、消費者が求めているが、まだ市場で提供されていない商品やサービスを指します。このギャップを的確に見つけることが、新規事業における差別化戦略の基盤となります。

たとえば、家電業界では「高性能だけど操作が複雑」という課題がありました。このギャップにいち早く目をつけたのがDysonです。高性能な掃除機を開発しながら、シンプルで使いやすいデザインを採用し、特に忙しい消費者層にアピールしました。

このように、市場でまだ提供されていない要素や、「高品質だが価格が高い」というようなバランスに問題がある場合に、「手頃な価格で高品質」という差別化戦略が有効です。

市場ギャップを特定するためには、以下のリサーチ手法が有効です。

  • 競合製品やサービスのレビュー分析:消費者レビューを分析し、何が期待されているのか、どの部分に不満を抱いているかを把握します。
  • 顧客インタビュー:顧客との直接的な対話を通じて、現状の市場で満たされていないニーズを特定します。
  • ソーシャルリスニング:SNS上での消費者の声をリアルタイムで分析し、新たなトレンドや隠れたニーズを発見します。

未解決ニーズの発見

未解決ニーズとは、消費者が日常生活や仕事で抱えている不満や問題を指します。これを解決する商品やサービスを提供することで、革新的なビジネスチャンスをつかめます。

たとえば、出張が多いビジネスパーソンは、時間管理や効率性向上のためにさまざまなデバイスを利用しますが、これらが一つのデバイスに集約されていることは稀でした。ここに目をつけた企業は、スマートフォンのスケジュール管理、プレゼンツール、ビデオ会議機能などを一体化した多機能デバイスを開発し、このニーズを解決したのです。

このように、具体的なユーザーの「不便」を探り、そこにフォーカスした製品を開発することで、成功に繋がります。

未解決ニーズを発見するためには、次の手法が効果的です。

  • ペインポイント調査:顧客が日常的に感じている不便や問題点を調査し、それを解決する手段を見つけます。
  • フォーカスグループ:特定の消費者層に対してグループインタビューを行い、どのような課題を抱えているかを深掘りして理解します。
  • 競合分析:競合製品の弱点や未対応領域を分析し、自社でそれを補完する製品やサービスを開発します。

イノベーション機会の発見

特に技術が急速に進化する分野では、新しい技術を導入することで、既存の市場ギャップを埋め、競合他社に対する競争優位性を築くことが可能です。未解決ニーズにいち早く対応する企業が市場のリーダーシップを握るチャンスがあります。

例えば、Amazonは配送の課題に着目し、ドローン配送やAIによる在庫管理を導入することで、消費者の「配送遅延」や「在庫切れ」に対する不満を解決しました。このような技術革新を活用したビジネスモデルは、競合との差別化を生み出し、顧客満足度を大幅に向上させます。

イノベーションの機会を発見するためには、次のアプローチが有効です。

  • 技術トレンドのモニタリング:AIやIoT、ブロックチェーンなどの技術が市場に与える影響を分析し、早い段階で導入を検討します。
  • 技術カンファレンスや展示会の参加:最新技術の情報を入手し、業界の先端トレンドを理解します。
  • 特許リサーチ:競合他社が取得している特許を分析し、どの技術に投資すべきかを判断します。

2. 顧客インタビューやアンケートの活用

新規事業やサービスの成功には、顧客の声を直接反映させることが欠かせません。顧客インタビューやアンケート調査は、顧客のニーズや期待を把握し、サービスの設計に生かす有力な手法です。

  • 顧客インタビュー:実際の顧客と対話することで、製品やサービスに対する具体的なフィードバックを得られます。たとえば、試作品を使ってもらい、使い勝手や改善点をヒアリングすることで、顧客ニーズに合った製品開発が可能です。
  • アンケート調査:広範なデータを収集し、顧客のニーズを数値的に分析できます。これにより、多くの顧客が求める共通の要望や期待を把握し、製品開発やマーケティングに反映できます。たとえば、アンケート結果から「手軽さ」や「デザイン性」が重視されていると分かれば、その要素を強化した製品サービスの開発を行えます。
  • データに基づく洞察の抽出:インタビューやアンケートで得られた定量・定性データを基に、どの要素が顧客にとって最も重要かを明確にし、それに沿った意思決定を行うことで、製品やサービスの競争力を高められます。

3. エキスパートインタビューによる洞察収集

業界や技術に精通したエキスパートからの知見を得ることは、新規事業開発において重要です。自社では把握しきれない技術トレンドや市場の未来動向について、専門家のアドバイスが事業計画を強化します。

  • 業界専門家へのインタビュー:業界に精通した専門家は、過去の経験や知識に基づき、市場の動向や未来予測に関する洞察を提供してくれます。例えば、環境に配慮した商品を開発する際、サステナビリティに詳しい専門家からの助言は、製品設計やブランド構築に大きなヒントを与えてくれるでしょう。
  • 技術専門家との連携:技術分野において、最新技術を迅速に理解することは、競争力を維持するために不可欠です。例えば、AIやブロックチェーンといった新技術に関する専門家と連携すれば、自社製品を未来の市場ニーズに応えられる形に進化させられます。
  • 市場の未来予測:市場の未来を見通すためには、エキスパートの知見が大いに役立ちます。どの技術が今後普及し、どの分野で成長が期待されるのかを正確に予測することで、長期的なビジネス戦略を立てられます。

新規事業開発で効果的なリサーチ手法8選

ここでは、新規事業開発で効果的な8つのリサーチ手法をご紹介します。

市場調査

市場調査とは、新規事業やサービスのターゲット市場を深く理解するための手法です。

市場の規模や成長性、消費者のニーズや購買行動を分析し、どの市場に参入するかを決定する際に重要な役割を果たします。主な活用データは以下の通りです。

  • 二次データ:政府機関や業界団体、調査会社のレポートを使用して市場全体の動向を把握します。
  • アンケート調査:ターゲット顧客層のニーズや期待を数値で捉え、より具体的な市場の需要を分析します。
  • インタビュー:定性的なデータを収集し、顧客や業界の専門家から直接洞察を得ることで、市場のリアルな声を集める手法です。

市場調査は、新規事業の立ち上げや新しい市場への進出前に行い、どの市場セグメントに焦点を当てるべきかを判断するために用いられます。特に、成長性が不透明な市場や、消費者ニーズが理解されていない場合に効果的であり、新興市場や国際展開時にも重要な手法です。

競合分析

競合分析は、競合他社の戦略や製品・サービスを詳細に調査し、自社との差別化を図るための手法です。この分析により、競合の強みや弱みを把握し、自社がどこで競争優位性を発揮できるかを明確にします。

競合分析の主な種類は以下の通りです。

  • SWOT分析:競合の強みや弱み、機会や脅威を評価し、自社が競合に対してどう立ち回るべきかを検討します。
  • ベンチマーキング:競合他社と自社の製品やサービス、価格設定、マーケティング戦略を比較し、どの分野で優位に立てるかを見極めます。
  • 市場シェア分析:競合の市場シェアを把握し、自社がその市場でどのくらいのシェアを獲得できるかを予測します。

競合分析は新規市場参入前や、新しい製品・サービスを開発する際に実施され、競合が多い市場や競争が激化している分野で、自社の優位性を確保したいときに特に有効です。また、競合の失敗例から学び、リスクを最小限に抑えるためにも活用されます。

顧客リサーチ

顧客リサーチは、ターゲット顧客のニーズや期待、製品サービスに対する反応を詳細に調査する手法です。

潜在顧客や既存顧客から直接フィードバックを得ることで、製品やサービスの開発やマーケティング戦略に反映させます。顧客リサーチの主な手法は以下の通りです。

  • 顧客インタビュー:ターゲット顧客に直接意見を聞き、製品やサービスに対する具体的な感情や反応を得ます。特に、深い洞察を得たい場合に有効な手法です。
  • アンケート調査:多数の顧客から定量的なデータを集めるために利用され、顧客満足度や購買意欲を数値化し、より広範囲なデータを収集します。
  • フォーカスグループ:少人数の顧客を集めてディスカッションを行い、グループダイナミクスを通じて個別のインタビューでは得られない意見や洞察を得られます。

顧客リサーチは製品やサービス開発の初期段階や、プロトタイプのテスト段階で実施され、顧客ニーズを深く理解し、最適な商品やサービスを提供するために必要なフィードバックを得るのに役立ちます。また、既存製品の改善点を見つける際にも効果的です。

トレンド分析

トレンド分析は、業界や市場の動向、消費者の嗜好、技術革新などの変化を把握し、未来のビジネス環境を予測するためのリサーチ手法です。この手法により、市場や業界の長期的なトレンドを見極め、新規事業やサービスの方向性を決定します。

  • PEST分析:政治(Political)、経済(Economic)、社会(Social)、技術(Technological)の4つの外部環境要因を分析し、これからの業界や市場のトレンドを特定します。
  • ソーシャルメディアモニタリング:SNSを通じて、リアルタイムで消費者の嗜好やトレンドの変化を把握し、新しいニーズの発見に繋げます。
  • 業界レポート:業界レポートを分析することで、今後の市場変化や成長分野を予測します。

トレンド手法は、新規事業のアイデアを考案する段階や、事業の長期戦略を立案する際に有効です。特に、技術革新が激しい分野や、市場環境が急速に変化している業界では、トレンド分析を通じて競争力を維持し、将来の成長機会を捉えることが不可欠です。

フィージビリティスタディ

フィージビリティスタディでは、リスクの特定とその対応策の検討も重要なプロセスです。リスクアセスメントでは、以下のようなリスクを特定し、それに対する具体的な対策を検討します。

  • 市場リスク:ターゲット市場での需要変動や競合の動向、消費者の嗜好変化に伴うリスクを分析します。例えば、新たに進出する市場が競争過多である場合、差別化戦略を強化しなければならないことが明らかになるかもしれません。
  • 法規制リスク:新規事業が展開される国や地域における法規制や、環境規制に従う必要があるかどうかを評価します。例えば、環境規制が厳しい国での製品販売を計画する場合、製品設計の変更や追加コストが発生する可能性があります。
  • 技術リスク:導入する技術が市場で広く受け入れられないリスクや、技術の進歩が競合より遅れてしまうリスクを評価します。新しい技術導入に失敗した企業の事例を研究し、失敗を回避するための対応策を考えます。

フィージビリティスタディは、プロジェクトの初期段階で行うべき重要なリサーチです。特に多額の投資が必要な事業や、新規市場に参入する際のリスクを軽減するために不可欠です。スタディの結果によって、プロジェクトの進行可否を判断し、必要であれば計画の見直しや修正を行います。

デザイン思考

デザイン思考は、製品やサービス開発において、ユーザー視点で課題を捉え、柔軟に解決策を生み出すアプローチです。

この手法は単にユーザーのニーズを表面的に把握するだけでなく、その深層にある「本当の課題」を見つけ出すことを目的としています。これにより、革新的で価値のあるソリューションを生み出すことが可能になるのです。

デザイン思考のプロセスは、共感、定義、アイデア創出、プロトタイピング、テストの5段階から構成されます。まず「共感マッピング」を通じて、ユーザーが直面する問題や真のニーズを深く理解します。この段階で得た洞察をもとに、ユーザーの観点で解決すべき課題を明確に定義します。

次に、ブレインストーミングにより多様なアイデアを引き出し、具体的なプロトタイプを迅速に作成する「ラピッドプロトタイピング」を行います。このプロトタイプはあくまで仮のモデルであり、ユーザーからのフィードバックを受けて改良を重ね、最終的に実用性の高い製品やサービスに近づけていくのです。

デザイン思考は、特にユーザーエクスペリエンス(UX)を重視する開発において、既存の方法では解決が難しい問題に対し、独自の価値を提供するソリューションを発見する手助けとなります。これにより、顧客の期待を超える新たな価値創造が可能となり、競争力の高い製品やサービスの実現に寄与します。

データ分析

データ分析は、膨大なデータを活用して顧客行動や市場のトレンド、ビジネスのパフォーマンスを深く理解し、戦略的な意思決定を支える手法です。定量データを分析し、見えにくいパターンや因果関係を明らかにすることで、ビジネスの成長や効率化を促進します。

代表的な手法として、回帰分析、クラスター分析、予測分析、A/Bテストが挙げられます。

回帰分析では、データ間の関係性を数値で捉え、どの要因が結果に影響を与えるかを特定します。例えば、広告費と売上の相関を測定することで、マーケティング効果を評価し、広告予算を最適に配分できるようになります。

一方、クラスター分析は顧客データをグループ分けし、ターゲット層の発見に役立ちます。これにより、パーソナライズされたマーケティング戦略を構築し、より効果的に顧客へアプローチできます。予測分析では、過去のデータをもとに将来の動向を推測し、需要や売上の見通しを立てることが可能です。また、A/Bテストでは、異なる施策の効果を比較し、最も成果の出やすい手法を実証的に判断できます。

データ分析は、特に大量のデータを活用してマーケティングや営業の成果を見極めたいときや、新規事業の成果をリアルタイムで把握したい場面で威力を発揮します。さらに、ビッグデータを活用する企業やデータに基づく意思決定が求められる状況においても欠かせません。

こうしたデータ分析の取り組みによって、企業は市場の動向や顧客のニーズを先読みし、競争力を高め、持続的な成長を支える基盤を築けるのです。

フィールドリサーチ

フィールドリサーチは、現場に赴き、消費者の実際の行動や市場のリアルな状況を直接観察することで、データ分析だけでは捉えきれない深い洞察を得る手法です。データ分析が数値やデジタルデータをもとにした判断を助けるのに対し、フィールドリサーチは、消費者の感情や文化的な影響など、行動の背景を探り、ユーザーの真のニーズを見極めます。

代表的な方法には、直接観察、インタビュー、エスノグラフィーがあります。

直接観察では、顧客が製品やサービスをどのように使っているかを現場で確認し、改善点や新しいニーズを発見します。たとえば、店舗内での顧客の動線や商品の配置が売上にどう影響するかを把握し、ディスプレイの工夫につなげることが可能です。

インタビューは、消費者や従業員から直接話を聞くことで、満足度や改善要望を把握する方法です。これにより、製品やサービスに対する具体的な感想や、期待とのギャップを知ることができます。エスノグラフィーでは、消費者の生活環境や習慣を長期間にわたって観察し、文化や社会的背景が消費行動にどう影響しているかを深く理解します。

フィールドリサーチは、製品やサービスが実際にどのように使われ、どのような評価を受けているのかを知りたい段階で特に効果的です。また、海外進出や異文化圏での消費行動を理解する際にも役立ちます。

こうして消費者の生の声や行動パターンを直接把握することで、データ分析だけでは見えない潜在ニーズが浮き彫りになり、より的確な意思決定が可能になります。

新規事業開発リサーチを怠ることのリスク

新規事業開発におけるリサーチは、事業の成功に不可欠です。リサーチを怠ることで、事業計画に深刻な誤りを生み出し、結果として失敗のリスクが大幅に高まります。以下に、リサーチ不足によって生じる3つの主要なリスクについて解説します。

1. 市場ニーズとのミスマッチ

市場ニーズを正確に把握せずに新規事業を進めると、顧客が本当に求める製品やサービスを提供できず、「市場ニーズとのミスマッチ」が発生します。これにより、消費者の関心を引けず、結果として市場で失敗するリスクが高まります。

市場リサーチを行わなければ、ターゲット市場が何を必要としているのか、どのような課題を抱えているのかを理解できません。その結果、顧客の期待に応えることができない製品やサービスを提供し、消費者から選ばれない可能性が出てきます。

たとえば、低価格志向の市場に高価格帯の製品を投入したり、顧客が求めていない機能を盛り込んだりした商品を開発してしまうことが考えられます。

具体的な例として、1990年代後半のソニーのMD(ミニディスク)が挙げられます。

MDは当初、デジタルオーディオ市場で注目を集めましたが、すぐにAppleのiPodが登場し、消費者が求める利便性や大容量ストレージに応えたことで、MDは市場で敗北しました。このケースでは、ソニーが消費者のニーズを十分に理解できず、技術の方向性を誤った結果、成功を逃したのです。

2. 競合優位性の欠如

リサーチを怠ると、競合他社の動向や戦略を正確に把握できず、競争市場において自社がどのように優位性を発揮するかを見失うリスクがあります。

競合他社がどの分野で強みを持ち、どのような戦略で市場を支配しているかを理解しないまま参入すると、差別化を図ることができず、競合に対して劣勢に立たされることになります。特に、新しい市場への参入時には、競合他社の存在が非常に大きなハードルとなることが多く、競合の強みを無視して参入すると、市場シェアを奪うことが困難になります。

携帯電話業界のブラックベリーの事例は、このリスクを如実に示しています。

一時期、ビジネスパーソンに愛用されたブラックベリーは、iPhoneやAndroidの登場後、競合の技術革新やユーザー体験向上に対応できませんでした。競合優位性を維持するためのリサーチと対応が不十分であったため、最終的に市場での地位を失いました。

競合の動向を適切に把握できていれば、より早期に新しい戦略を立てることができた可能性があります。

3. 投資判断の誤り

十分なリサーチを行わないまま新規事業に投資すると、事業の成長可能性やリスクを正確に評価できず、誤った投資判断を下すリスクが高まります。

これは、資金の無駄遣いや機会損失を引き起こし、企業の全体的なパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性があります。フィージビリティスタディや市場分析を行わないと、市場規模や成長性を過大評価したり、リスクを見逃したりしてしまうことがあります。

例えば、参入を検討している市場がすでに飽和状態であったり、法規制や技術的なハードルが高かったりする場合、それを事前に見抜けなければ、大規模な損失を出す危険性があります。

米国の通信企業Iridiumの事例では、1990年代に衛星電話ネットワークに多額の投資が行われましたが、衛星電話の需要を過大に見積もった結果、大失敗に終わりました。携帯電話技術の急速な発展により、衛星電話の需要は予想を大きく下回り、最終的にIridiumは大規模な損失を被りました。

このケースは、リサーチ不足によって誤った市場評価が行われた典型的な例です。

新規事業開発リサーチの注意点

新規事業開発におけるリサーチは成功の鍵を握りますが、効果的に進めるためにはいくつかの注意点を押さえておく必要があります。ここでは、リサーチを行う際に特に気を付けるべき4つのポイントについて解説します。

1. 偏った情報源に依存しない

リサーチを行う際、特定の情報源や一つのデータセットに過度に頼ることは避けるべきです。これにより、バイアスがかかり、偏った結論に導かれるリスクがあります。多様な視点から情報を収集することが、リサーチの精度を高めるために不可欠です。

例えば、特定の業界レポートだけを参考にすると、そのレポートが強調するバイアスに影響され、競争環境や市場ニーズを誤解する可能性があります。これを防ぐために、業界レポートだけでなく、顧客アンケートやインタビュー、競合分析など、異なる情報源からデータを集め、複数の視点を持つことが重要です。

2. リサーチ範囲を明確にする

リサーチを進める前に、その目的や範囲を明確に設定することは重要です。範囲が曖昧なままリサーチを進めると、膨大な情報に振り回され、結局必要なデータが得られないことがあります。

例えば、具体的なターゲット層や市場セグメントが定義されていないと、的外れな結果が得られ、無駄なデータ収集に時間やコストを浪費してしまいます。したがって、リサーチを開始する前に、明確な目的と具体的な調査項目を定義することが重要です。

ターゲット市場の規模や消費者の購買意欲、競合の戦略など、リサーチの焦点を絞ることで、効率的に有益な情報を得られるでしょう。

3. データを過信しすぎない

リサーチデータは戦略立案において重要な役割を果たしますが、そのデータを過信しすぎることは避けるべきです。

特に定量データに依存しすぎると、数字が捉えきれない部分、たとえば消費者の感情や新しいトレンドの兆しを見逃す可能性があります。過去のデータや市場成長率に基づいて判断を下すことは有効ですが、市場や消費者の嗜好は急激に変わることがあり、データが未来を完全に保証するわけではありません。

リスクを回避するためには、定量データに加え、定性データも活用し、消費者の潜在的なニーズや感情を理解することが重要です。これにより、数字に現れない変化にも柔軟に対応できるようになります。

4. リサーチに時間をかけすぎない

リサーチに過度な時間を費やすことは、迅速な意思決定を妨げるリスクがあります。

特に競争が激しい市場では、スピードが重要な要素となるため、リサーチに時間をかけすぎて意思決定が遅れると、ビジネスチャンスを逃してしまう可能性があります。また、完璧なデータを求めすぎてリサーチが終わらず、「分析麻痺」に陥るリスクもあります。

これを避けるために、リサーチには期限を設け、ある程度のデータが揃った段階で決断することが重要です。完璧な情報を求めるのではなく、80%の確信を持てた時点で決断し、残りの20%は実行しながら修正していく柔軟なアプローチを心がけることが求められます。

まとめ

新規事業開発におけるリサーチは、成功を左右する極めて重要なプロセスです。

しかし、リサーチを効果的に行うためには、「偏った情報源に依存しない」「リサーチの目的を明確にして無駄なデータ収集を避ける」「定量データと定性データのバランスを取る」など、いくつかのポイントを押さえる必要があります。

こうした準備が欠かせない一方で、膨大なデータから信頼できる情報を選び、多角的に分析するのは決して簡単ではありません。

弊社のリサーチサービスは、競合分析から市場トレンド調査、顧客ニーズの深掘りまでを幅広くサポートし、御社の成長を後押しします。

熟練したリサーチャーが、多様なリサーチ手法を駆使して「生のインサイト」を提供することで、定量データには表れにくい消費者の感情や行動の裏側を明らかにします。また、リサーチの目的や段階に応じた柔軟なアプローチで、効率的に情報を収集・分析し、貴社が求める「使える答え」をお届けします。

新規事業や市場開拓の確かな戦略を築きたいとお考えなら、お気軽に私たちにご相談ください。

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